Proton Mail - レビュー
Proton@protonmail.chプロトンメールは、End-to-End の暗号化により、セキュリティとプライバシーを強固に保護するスイスのジュネーブにあるWebメール、およびiOSとAndroidアプリ。
大手メディアに紹介されたこともあり、同じEnd to End 暗号化メールのTutanotaと比較して知名度が抜群に高くなっています。
その実力はもちろん、めぐり合わせも良く爆発的にヒットしました。2024年のアカウント数は 1億、海外ではすでにメジャーの仲間入りを果たしたフリーメールです。
高度な内部処理と打って変わって使い方は至って簡単。日本語表示にも対応したシンプルな画面には高級感があります。
機能はメールの送受信とアドレス帳とカレンダー。とことんセキュリティとプライバシー保護にこだわっているため、新しい機能の導入には非常に慎重です。追加して欲しい機能については要望の多いものから優先的に検討されます。
Proton Mail はすべて無料のうえ広告も付きません。有料プランの収益は寄付と共に運営費として計上されます。DOS 攻撃を受けた後に無料プランの制約が少し厳しくなりましたが、個人で使用するには気にする必要のない程度です。
$550,000 の民間投資を受けたことからも、ユーザーがいかにプライベートな通信を望み、Proton Mail に期待しているかがうかがえます。
良い点
- End-to-End Encryption
- 日本語表示に対応
- インターフェイス、送信メール共に広告なし
- Onion Services + SSL
- Facebook OpenPGP Email対応
- オープンソース
悪い点
- ドメイン名が長い
- ユーザーフィルターが 1つのみ
- アカウント名の空きが比較的少ない
- 匿名性はさほどない
機能詳細
基本機能 | Webmail 専用。 |
拡張機能 | メール検索、迷惑メールフィルタ、自動振分、署名、テーマの変更、エイリアス、メールのインポートとエクスポート、連絡先のインポートとエクスポート、キーボードショートカット、送信取り消し。 |
追加の機能 | アドレス帳、カレンダー、ドライブ、VPN。 |
容量制限 | 保存容量は 500 MB。添付ファイル 25 MB、100ファイルまで 送信可能なメールは 150 通/日、50 通/時。受信は制限なし。ベータからのユーザーは保存容量 1 GB をキープ。 |
アカウント期限 | 1 年 未使用で削除される可能性 |
セキュリティ | HTTPS、HSTS、SPF、受信トレイのパスワード保護、末端間暗号化、Onion Services、2 要素認証。 |
ドメイン |
|
開設日 | 2014年5月16日 |
スマホアプリ | |
関連リンク | ソースコードは Github で公開されています。MIT licenseは制限の緩いオープンソースのライセンスです。 ProtonMail Bridge (IMAP、SMTPアクセス) ProtonVPN は無料プランでも利用できます。Windows、MacOS、Linux と Android、iOS に対応した専用アプリからアクセスします。 |
機能補足
Proton (プロトン) とは原子核を構成する陽子のことです。
ProtonMail は Proton Mail の名称に変わりました。サービス内容が増えたことにより Proton サービスの中の Mail の位置づけです。
ログインは、Mail、Calendar、Drive、VPN で共通です。各々のサービスに直接ログインも可能です。
アンチウィルスには ClamAV、スパムフィルタリングに SpamAssassin が使われています。
無料プランのユーザーフィルターは 1 つのみ設定できます。
有料プランではカスタムドメインの利用や自動返信、自動転送も可能です。
メールのエクスポートは、受信メールツールバーのその他からエクスポートできます。複数のエクスポートはできません。
Proton Mail からデータを出さないのがセキュリティ上ベストなため、一括エクスポートしてのバックアップやメールデータ移行はできないようになっています。
メールのインポートは、IMAP からのみ可能です。ファイルからはインポートできません。
Proton Mail からの連絡メールには必ず⭐スターが付きます。付いていないものはフィッシングメールの可能性があります。
アカウントの有効期限は、2022年4月30日より、3 ヶ月から 1 年へ変更されました。1 年間未使用で削除される可能性があります。ただし、1 度でも有料プランを利用した場合は現在フリープランでも削除されません。
メール画面 | WEB送信 |
付かない | 付かない |
WEB送信 |
付かない |
暗号化の概要
- からProton Mail 同士のやり取りは暗号化されます。
- からProton Mail 以外への送信は暗号と平文の選択式。
- からProton Mail 以外から受信したメールは暗号化されません。
2 は送信したメールに Proton Mail のサーバーの暗号化されたデータへアクセスできる URL を添付することで実現しています。リンク先のページでパスワードを入力すると内容を閲覧できるしくみです。リンクには有効期限を設定しておくこともできます。Proton Mail 以外へは、普通の Email と同じように暗号化せずに送信もできます。
3 の送信側が暗号化していない場合は、Proton Mail に限らずメール内容の暗号化は成立しません。ただし、返信に限り受信メールのリンクより内容を暗号化して送信可能です。一応、公開鍵から PGP 暗号化して送信してもらうことも可能ですが、今のところあまりお勧めできません。
Proton Mail からの暗号化メールを開くにはパスワードが必要です。それならば、パスワード付き Zip で送信しても同じですので、あくまで利便性を考慮したオプション扱いです。暗号化メールは Proton Mail 同士で使うのが一番メリットがあります。
Proton Mail のアカウントの作成とキャンセル
取得方法を画像付きで解説しました。
メールアカウントを作成は簡単です。分からないところがあったら参照する程度で構わないでしょう。
Proton アカウントは 13 歳以上が取得できます。
複数アカウントの取得は認められていません。
アカウントの削除は、設定 (Settings) の アカウントとパスワード (Account and password)、アカウントの削除 (Delete account) から可能です。
削除されたメールアドレスは再利用されません。
Proton Mail のエイリアス
拡張アドレス
+と.を使った拡張アドレスの利用が可能。
contact+geneva@protonmail.ch = contact@protonmail.ch
secu.rity@protonmail.ch = security@protonmail.ch
拡張アドレスは、意図的に追加の機能として実装されました。
ドメイン エイリアス
.ch と .com と @pm.me と @proton.me は同じ受信箱へ配送されます。
media@protonmail.ch = media@protonmail.com = media@pm.me = media@proton.me
ただし、アカウントの種類により使えるドメインに制限があります。
@protonmail.ch | @protonmail.com | @proton.me | @pm.me | |
無料アカウント(新) | - | 取得した 1 つのみ送受信可 | 受信のみ | |
無料アカウント(旧) | 取得した 1 つのみ送受信可 | 送受信可 | 受信のみ | |
優待アカウント | 送受信可 | 受信のみ | ||
有料アカウント | 送受信可 |
新規ユーザーが関係するのは、一番上の無料と一番下の有料プランです。
無料アカウントの所有していない一方のアドレスは他のユーザーが取得することはないため、送信されたメールは必ず存在しないアドレスとして返送されます。
@pm.me は 2018年3月29日に追加されました。
設定のメッセージと作成から ✉pm.me を有効化すると受信できます。
@proton.me は、2022年6月8日までにアクティブ化した場合に限り利用できます。
優待アカウント
オープンベータテストから利用しているアカウントには機能面で優遇措置がなされています。
- 保存容量 1 GB
- protonmail.com と protonmail.ch のアドレスを送受信とも使える。
FREE プラン扱いですが、現在の内訳と異なるので FREE プランを選択するとダウングレードされます。
優待アカウントでも、本文末尾につく Proton Mail の署名を無効にできなくなりました。メール作成時に手動で削除する必要があります。
複数のドメインを使えるアカウントは、設定のユーザー情報とアドレスにある表示名と署名からデフォルトアドレスを変更できます。
歴史的には、@protonmail.ch → @protonmail.com → @pm.me → @proton.me の順に解放されました。
Proton Mail のオニオンサイト
に DDoS アタックを受けたあと、サーバーの所在を特定しにくい、Onion Services が公開されました。公式の解説ページも設置されています。
v2 onion の URL は Tor Project により廃止されました。protonirockerxow.onion は使えません。
@protonmailrmez3lotccipshtkleegetolb73fuirgj7r4o4vfu7ozyd.onion のアドレスはなし。
2022年4月20日より Onion Services からアカウントの取得も可能になりました。
匿名性を強化すると同時に、Dos 攻撃や政府の情報統制で Proton Mail に接続できなくなったときの迂回手段としての働きも期待できます。
Proton Mail はロシアの一部でブロックされていますが、Tor は実際に有効な対策方法になっています。
オニオンサイトは SSL のみの公開です。
珍しい .onion ドメインの SSL 証明書は DigiCert から認証されています。DigiCert は他に Facebook の Tor 専用アドレス www.facebookwkhpilnemxj7asaniu7vnjjbiltxjqhye3mhbshg7kx5tfyd.onion にも証明書を発行しています。
Onion Services は End to End で暗号化されるので HTTPS は必ずしも必要ではありませんが、どちらかが侵害されても安全な対応ができるように冗長性を持たせてあります。
Tor ブラウザ
SSL Server Test
Proton Mail の料金
Proton Mail は無料で利用できますが有料プランも用意されています。
Mail Plus | Proton Unlimited | |
---|---|---|
容量 | 15 GB | 500 GB |
メールアドレス | 10 | 15 |
1 ヶ月 | 785円(4.99€) | 2,043円(12.99€) |
12 ヶ月 | 7,530円(47.88€) | 18,854円(119.88€) |
24 ヶ月 | 13,173円(83.76€) | 30,158円(191.76€) |
1 € = 157.27 円 換算 (記: )
表記は €/円 換算したものです。また、細かい機能の違いがあります。正確な情報はリンク先を御覧下さい。
Proton Unlimited は Drive や VPN など、すべての Proton サービスが対象です。
Mail Plus はアップグレードのみ可能です。
支払いは、ユーロ、ドル、スイス フラン 建てですが、5€ = 5$ = 5CHF と価格設定は大雑把です。
クレジットカード, Bitcoin, Paypal, 現金での支払ができます。(Payment options)
複数ユーザー向けには Proton for Business が用意されています。
旧プランを表示
Plus | Unlimited | |
---|---|---|
容量 | 15 GB | 500 GB |
メールアドレス | 10 | 15 |
1 ヶ月 | 708円(4.99€) | 1,700円(11.99€) |
12 ヶ月 | 6,789円(47.88€) | 16,998円(119.88€) |
24 ヶ月 | 11,877円(83.76€) | 27,191円(191.76€) |
1 € = 141.59 円 換算 (記: )
PLUS | Professional | VISIONARY |
---|---|---|
5 GB | 5 GB/user | 20 GB |
5 addr | 5 addr/user | 50 addr |
645円/月(5€) | 1,032円/月/user(8€) | 3,870円/月(30€) |
6,192円/年(48€) | 9.675円/年/user(75€) | 37,153円/年(288€) |
1 € = 129.00 円 換算 (記: 2021年12月16日)
Proton Mail はコミュニティによる資金提供と有料プランの収益で運営されます。
寄付の他に機能追加の有料プランを用意しておくと、良いサービスに対しての「お布施」という形で資金が集まりやすくなります。ただ、Proton Mail の有料プランは Email にしてはやや高い。
問題は、匿名性を維持したまま支払う方法がなく、有料プランのが損をする可能性があるところです。ビットコインは一般的には匿名であると考えられますが、厳格に透明性が保たれているので、何らかの現実的な要因と結びつけられ保有者にたどり着く可能性があり、その他にもレートの高騰など投機的側面もあり、一般人には手を出しにくい状態です。
Proton Mail はそれを分かっているので機能面での差を大きくしてきていますが、本来のすべてのインターネットの人々のプライバシーを保護する理念から逸脱しつつあります。
もっとも、匿名でなくとも強固なセキュリティは保たれますし、独自ドメインを使用するなら、どのみち匿名性はありません。また、必要なら別に無料アカウントを取得すれば良いだけなので、ツールとしての使いどころさえ誤らなければ、大きな問題にはなりません。
Proton Mail のデータセンター
Proton Mail は、自前のハードウェアとネットワークによるスイスのデータセンターを使用しています。
世界で最も安全なデータセンターの一つ、スイスのアルプス山脈の地下 1000mに設置されている、ものすごい設備です。
Introducing the new ProtonMail website
スイスという場所にも理由があり、米国や EU の管轄外にあり、強力なプライバシー保護を守るスイス連邦データ保護法によって守られているためです。
Why Switzerland? - Proton Mail Blog
かつて、国家機関によりバックドアの設置を強制される実例がいくつもありましたが、その心配もありません。
Proton Mail は、スイスの司法の要求によってのみ、極めて限られたデータのみを公開します。さらに、公開されたとしても E2E で暗号化される Proton Mail からメールの内容に到達する事は不可能です。
Proton Technologies AG
Chemin du Pré-Fleuri, 3
CH-1228 Plan-les-Ouates,
Genève, Switzerland
Proton Mail の匿名性への懸念事項
スイスの司法の命令により IP アドレスを監視する義務を負う場合があり、2019年 4月には実際に特定のユーザーアカウントの IP ログを有効にしました。他のメタデータについても提供される可能性があります。
一部のセキュリティ専門家は、この法律の解釈や現実的な執行形態があいまいな点をもって Proton Mail の危険性を指摘しています。
2021年9月6日には、特定アカウントの情報をスイス当局へ提供したことへの説明をするとともにIP アドレスを記録しないの文言を削除するなどウェブサイトを変更しました。
実のところ Proton Mail の対応はこれまでと変わっていないのですが、一部の誤解を招く表現が是正されました。
Proton Mail の歴史
、ProtonMail は、スイスのジュネーブにあるCERN(欧州原子力研究機構)のJason Stockman、Andy Yen、Wei Sunの 3名の科学者によって開発されました。目的は政府の監視から世界中のオンラインの人々を保護する事です。
*スノーデンさんの告発が公開されたのは 2013年6月。
- ⭐ 、Proton Technologies AG はベータ版を一般に公開しました。この日付がよく設立日と紹介されています。
- 、予想を超えた圧倒的な申込があったため、公開から 60時間でアカウントの受け付けを停止。アカウント取得は申込制で順番待ちの状態で継続されました。
- 、Indiegogo クラウドファンディングより、目標額の$100,000を大きく上回る$550,377を調達。
- 、ProtonMail はCharles River Venturesとthe Fondation Genevoise pour l’Innovation Technologiqueから 200万$ の資金を調達
- 、大幅に改良の進んだ、ProtonMail 2.0 をリリース
- 、人気の TV シリーズ Mr. Robot にて、主人公の Elliot がプロトンメールを使うシーンが放映されました。
ProtonMail との綿密なディスカッションによる演出。
- 、ProtonMail 3.0 BETA をリリース
- ⭐ 、正式サービス開始 誰でもすぐにメールアドレスを取得できるようになり、同時に iOS と Android アプリの正式版もリリースされました。
- に ProtonMail のユーザー数は 200万人を超え、には 500万人
- には、1000万ユーザーを獲得するに至っています。
- 、EU の Horizon 2020 より €2 Million(2.5億円)の助成金を獲得。Horizon 2020 に選択されたことにより、国家にも認められたプロジェクトになりました。
- の Proton Mail Blog にて、ユーザー数が 1500万以上であることが確認されました。
- 、2020年は 2000 万以上のアカウントによりスタート。
- 2021年には 5000 万アカウントを超えました。
- 2022年5月26日、Proton へニューリアル。ウェブサイトの刷新と Proton Mail, Proton VPN, Proton Calendar, Proton Drive が統合されました
- 2022年6月8日、7000 万ユーザーに達した報告
- 2023年4月18日、1 億アカウントへ到達